
2012年 9 月 13 日(木)~24 日(月)、特定非営利活動法人アフリカ支援アサンテナゴヤ主催で、アフリカケニアの無医地区へ医療チームを組んでの第 3 回無料医療活動に参加させて頂きました。メンバーは、医師6名、歯科医師 1 名、看護師 3 名、検査技師(獣医)1 名、薬剤師 3 名、鍼灸師 2 名、スタッフ 3 名の総勢 19 名でした。
私は、微力かもしれませんが東洋医学でやれることは必ずあると信じ、鍼灸師として開発途上国の方々へのボランティアをしたい!という夢を持っていましたが、鍼灸師が海外ボランティアを行える道はいくら探してもみつからない状況でした。そんな中、(一社)愛知県鍼灸専門師会にて、アサンテナゴヤ理事長の石川佳子先生がケニア無料医療活動の鍼灸師参加募集をされており、それがきっかけで私はこの活動に参加させて頂ける機会に恵まれました。

訪れたケニアの GEM EAST 村は、電気も水道もなく、きれいな水の汲める井戸もない無医村です。そして、総人口は5~6000人で HIV感染症罹患率が非常に高い農村地です。経済的に貧しい地区で病院はなく、他地区への病院へ行くこともできない状況です。また、外部からの情報が入ってこないため、医療情報も乏しく、命を落としてしまう危険性が高いのです。
この村で5日間の医療キャンプを行いました。患者様は受付から、内科、感染免疫内科、小児科、皮膚科、歯科、鍼灸へ必要な場所で診療を受け、必要であれば採血、薬局へ行かれます。トータルで延べ約 1,400名の患者様が来られました。

ドクターの先生は、HIV、マラリアの検査をはじめ多くの感染症、内科疾患、小児科疾患、皮膚科疾患、整形外科疾患など種々様々の科目の患者様約1,100名の診察をされました。HIVにおいては、188名検査をして30名の方々の陽性(16.0%)があり、マラリアにおいては、145名検査をして 45名の陽性(31.0%)がありました。陽性の患者様は、近隣の病院において治療がされることになります。
今年初の歯科では、待ち望んでいらっしゃった患者様でいっぱいでした。器具の少ない環境の中、130名の多くの患者様の治療をされていました。抜歯される方も多くて、患者様は大変喜ばれていらっしゃいました。
採血では、多くの方々の採血がされました。中でも子ども達は、大泣きしながら採血されていました。採取した血液は、ホテルで結果を診るのですが、毎晩夜遅くまでかけて行われました。
薬局では、ものすごく多くの患者様がいらっしゃるため、大忙しでした。薬剤の準備からお渡しまで、とても大変で医療キャンプのどのブースよりも最後の時間まで毎度行われました。

鍼灸では、石川先生と私の2名で鍼灸治療を行いました。鍼灸には直接受付から来られる方と、内科、感染免疫内科、小児科、皮膚科で診察を受けてから鍼灸へ来られる方がいらっしゃいます。ドクターの先生から鍼灸へ多くの患者様を誘導して頂きました。症状は、腰痛、肩・背部痛、胸痛、膝痛、頭痛、足背・足首痛、頸・後頭部痛、腹痛、下肢痛、腕・肘関節痛、めまい、眼科疾患、生理痛、むくみ、冷え、呼吸の苦しさ、右半身麻痺、下半身麻痺、歯痛、便秘、咳、中耳炎などで、鍼灸師2名で124名の患者様を治療させて頂きました。

なかでも、私にとりましてとても印象深かった方々が3名います。
一人目の方は、2005年に事故で下半身麻痺となった車椅子の男性で、強い両下肢痛と腰痛を訴えていらっしゃいました。この方に、鍼治療させて頂いたところ、両下肢部と腰部の痛みが消失し、車椅子の男性は大変喜んでくださり、握手をさせて頂きました。この時の笑顔は、本当に嬉しくて鍼灸師としてここへ来てよかったと思う瞬間であり、この先も忘れることはないでしょう。

次に二人目の方は、両足底の尋常性疣贅(イボ)から二次感染を起こしているとみられる女性の方です。両足が腫れ上がって、足底を中心に感染が進行しており、右足の第2指~第4指足背側の中足指節関節、近位・遠位指節間関節周囲には、膿が溜まっている状態でした。まるで象の足のようで、日本での鍼灸臨床では診ることがない疾患でした。ドクターの先生の治療後、鍼治療を行いました。腰痛、両下肢痛、腹痛も患っていて、鍼治療後は腰部、両下肢部、腹部の痛みが消失しました。そして、感染症の両足の患部は、できるだけのことは精一杯やろうと思い、全身の鍼治療の後、灸治療を行いました。その結果、膿の部分が少しだけ渇いてきたのが確認できました。わずかのことしかできませんでしたが、現地での疾患の現実を目の当たりにした気持ちでした。また、予防や対処方法をお伝えする必要性をとても強く感じました。

そして三人目は、夜に咳と呼吸が苦しい2歳の男児です。初めて鍼を受ける怖さもなく屈託のない笑顔で、体に刺入せずやさしく皮膚を摩擦する「小児はり」を施しましたが、目がトローンとなって気持ち良さそうにしていました。村の子ども達の死亡率も高いと聞いておりましたので、元気に育ってもらえればと願いながら治療させて頂きました。鍼灸は、一本の鍼と一捻りのもぐさがあれば、どのような場所でも行えます。自然で体にやさしく自己治癒力を向上することのできる鍼灸のありがたさをあらためて感じました。

片道3時間以上もかけてキャンプ地まで歩いて来られる村の方もいらっしゃるということで、鍼灸ブース内の気温は38~40度、湿度は75%という中、熱中症様症状になりながらもお一人でも多くの方にという思いで行わせて頂きました。その疲れもあってなのか、3日目の医療キャンプに行く日の深夜3時頃から38.6度の発熱、嘔吐、下痢症状が出て、食中毒でダウンしてしまいました。私は、3日目の医療キャンプはお休みとなり、とても悔しい思いと、皆様にご迷惑をお掛けしてしまいました。その日は一日中、スポーツドリンクと水しか飲めず、頭痛、腹痛、めまい、腰痛、倦怠感でベッドから立ち上がる事すらできませんでした。でも、こうしてはいられないと思い、朝晩と次の日の朝と自身で鍼灸治療を行い、処方して頂いたお薬を服用し、なんとか一日で復活することができ、4、5日目の医療キャンプに参加することができました。

今回アサンテナゴヤ鍼灸部門として新たな試みを行いました。そのために、鍼灸部門で様々な作成物を作っていきました。
まず、鍼灸治療時のコミュニケーションを取るために、日本語、英語、ルオー語 or スワヒリ語による鍼灸治療用フレーズ(会話、体の単語)の表を活用しました。そして、ルオー族の生活背景や疾患の原因となるものが見えてくればと思い、鍼灸用の問診表を活用しました。
さらに、鍼灸治療後の効果の評価についても今回得ることができました。そしてまた、日常の健康管理のために、家庭でやって頂ける小児はり教室(対象は子どもだけでなく、大人も対象に含む)の開催をしました。
使用する小児はりは、爪楊枝を10本束ねて輪ゴムで止めたもので、現地にある材料を使って代用できるというものです。医療キャンプ4日目の終わりに施術の流れとツボのテキスト、爪楊枝の小児はりを全員にお配りし開催しました。教室は約40名の参加者があり、とても和気藹々とした楽しい時間となり、ジェスチャーを交えながら行いました。
医療を提供できる期間は限られていますので、普段から自分の体は自分で守るという気持ちを持って頂き、日本の伝統的な『小児はり』が家庭で身近に行われ、日々の健康管理の意識付けに繋がることを願っております。そして、新たな自立支援の第一歩となれば本望です。今後の活動に、少しでも繋がればありがたいと思います。

村の子ども達は、すごくかわいくて目がキラキラしていて、たくさんコミュニケーションをとってきました。私は15年間ボディビルを趣味で続けてきましたが、子ども達に「マッスルマン」と呼ばれ、一緒にポージングをしたり、片腕に 2、3人ずつ子ども達がぶら下がって遊びました。私自身、本当に楽しくて、言葉が通じなくてもすぐ仲良くなれ、このために日々鍛えてきたんだな位に思えてきました。日本の子ども達のように物は多くないけれども、ケニアの子ども達は生き生きと輝いていました。純粋な姿に、感動しっぱなしでした。
2012年9月24日(月)
