(名古屋大学医学部鶴友会館にて)
第6回日本プライマリ・ケア連合学会 中部ブロック支部学術集会が開催され、シンポジウムの講師をいたしました。
教育講演にて、日本統合医療支援センター代表理事 織田 聡先生による「日本型統合医療の理念」についてご講演がありました。統合医療の誤解について、統合医療本来の理念、医師が補完医療提供者と連携する意義について等ご講演がされました。
シンポジウムでは、名古屋大学大学院医学系研究科総合診療医学 佐藤 寿一先生の座長による「プライマリ・ケアにおける統合ヘルスケアの実践」をテーマに行われました。
シンポジウム01にて、名古屋大学医学部附属病院総合診療科 伊藤 京子先生による「名古屋大学総合診療科統合ヘルスケアチームの試み」についてご講演がありました。
名古屋大学総合診療科統合ヘルスケア外来について、家庭医療と統合医療、統合医療において医師に必要なことについてご講演がされました。統合医療において医師として必要なことは、補完療法についての技術や知識よりもむしろ、総合的な診断能力や患者とのコミュニケーション能力、チームをコーディネートする能力であること。
そして、日本で望ましい形での統合医療が広がるためには、プライマリ・ケア医の参加が鍵となっていること等がご講演されました。
シンポジウム02にて、東洋医学総合はりきゅう治療院一鍼 児山 俊浩による「統合ヘルスケアにおける鍼灸治療」についてお話させていただきました。
名古屋大学総合診療科統合ヘルスケアチームのRTD(ラウンドテーブル・ディスカッション)の対象となった患者の治療を、当院では2013年に初めて担当した。家族背景に大きな問題を抱えた患者だったが、治療経過は良好で治癒に至った。その経験も含めて、統合ヘルスケアにおける鍼灸治療の意義について検討したので報告させていただきました。
そして、チームに参加したことにより、共通言語で報告することや相互理解が深まり、多角的な視野が広がり、今、必要な治療の選択ができるようになっている。
- 伝統的鍼灸治療(経絡治療)
- EBM(Evidence Based Medicine)
- 心理社会的因子
- セルフケア
統合ヘルスケアにおける鍼灸治療としての方法を、4つご紹介させていただきまして、心と身体の両面からの鍼灸治療を積み重ねることによって、東洋医学でいう「心身一如」としての本当の健康につながる内容についてお話させていただきました。
シンポジウム03にて、日本ヨーガ療法学会 半谷 明美先生による「医療におけるヨーガの役割~統合ヘルスケアチームから学ぶ~」についてご講演がありました。
ヨーガの智恵を医療に役立てるために伝統的ヨーガの中から心身の健康に役立つ技法や、智恵を抽出し、効果的に実習できるように改良したのがヨーガ療法であること。そして、近年伝統的ヨーガの考え方である人間構造論と人間機能論に基づいた健康診断法によるヨーガ療法アセスメントが確立していること等についてご講演されました。
ヨーガでは人間存在を五つの鞘で表すことを人間五臓説と呼んでいる。これらの鞘の状態を正しく認識できないことが心身の状態を乱れさせ、様々な病が生じてくると考えられている。病気の原因をアセスメントし指導を行った症例の報告についてもご講演されました。
シンポジウム04にて、アロマとハーブの専門店KANON~香音~ 安田 由佳先生による「ヘルスケアにおけるアロマテラピーの有用性」についてご講演がありました。
精油を植物油に希釈して行うアロマトリートメントでは、施術中にこれまでの人生のストーリーを話されることも多く、触れるという行為によって患者との関係性を築くこともでき、大切な存在であることを確認することも可能である。この過程により、気づきを得て負の感情を手放せたり、認知の変容により体に起こる症状の軽減や改善につながることもある。
患者のmind/body/spiritに働きかけることで自己治癒力を向上させたり、症状緩和やQOLの向上を目的として補完代替療法として有用である。また、セルフケアが可能であることからも、予防医療としても有用な手段であることについて等ご講演されました。
シンポジウム05にて、岐阜県総合医療センター 鈴木 美砂子先生による「名古屋大学総合診療科統合ヘルスケアチームに参加して~臨床心理士の立場から~」についてご講演がありました。
チームが機能する上では、異なる意見や困難な患者に関わる不安もが共有され、チームで対応できる場であることが求められる。多様な視点への関心と、相手の立場を尊重しわかりやすく伝え返すことができるコミュニケーション力はメンバーとして求められる資質と思われる。同時に、ヘルスケア領域は医師の優位性が明確な場であるだけに、主催者である医師がメンバーの意見に耳を傾けるという土壌の上に成立したと感じている。
この5年間の継続こそが、チームや、実際の治療場面との相互作用のあり方を示すものではないだろうかとご講演されました。
各講演後に、総合討論を行いました。医師との連携についてや統合医療を各地域で実践するために必要なこと等々についてディスカッションされました。
貴重なご機会をいただきまして、とても大きな経験と学びをさせていただきました。
そして、ご参加されました先生方の統合医療・統合ヘルスケアについての見解や関心などを伺えることができまして、大変勉強になりました。
少しでも統合医療・統合ヘルスケアが広がることにつながれば、嬉しく思います。
2017年11月26日(日) 名古屋大学医学部鶴友会館にて